「でも、おかしくない? ブーカさんって結局、クビにはならなかったよね?」

ここまで読んできてビジンダーさん、あなたはそう思われてるかもしれません。

・・・そうですね。

確かにブーカ、クビにはならなかったですね。


ねずみ男事務長はブーカを辞めさせる気、満々でした。当然のこと、その事務長がこの話を有耶無耶にするワケはありません。

では院長先生がブーカの解雇、及び訪問介護事業所の閉鎖を認めなかったのか? 

・・・それも違います。そもそもこの話 

院長先生のところまで行ってません。


バタフライエフェクトという言葉、ご存知でしょうか?

映画のタイトルにもなりましたから、聞いたことはあると思います。日本でいう「風が吹けば桶屋が儲かる」と同意語ですかね。

バタフライ。蝶です。

ブラジルで、一匹の蝶が飛んでいたとします。その羽はばたきで起こる風。

・・・そんなもの、僅かなもんです。

しかしその風が、自然や気候、そして偶然の巡り合わせなど様々な要因を受けて流れていくと・・・

最終的には、テキサスで竜巻を起こす可能性もある。

たとえ些細なことでも、それが原因となって『未来』が変わる。全然関係ないようなところにも、多大な影響を及ぼすことだってある。

そういう現象を表す言葉です。


ねずみ男事務長との密談の日から、しばらく経ったあと。


バタフライエフェクトが起こります。


そしてそれは・・・

全てを変えてしまいます。

全てをです。


もし今の記憶を残したまま、過去に戻れるとしたら。

ねずみ男事務長から「ブーカを辞めさせたい」という話を持ち込まれたとき。

そこからやり直せるとしたら。

ワタシは「辞めさせる」「辞めさせない」どっちを選ぶか?


答えは「わからない」です。


いや「わからない」とか、おかしいやろ? と思われるかもしれません。

しかし今となっても・・・といより、その後に起こる『バタフライエフェクト』を知っている今だからこそ。

本当にわからないのです。どっちを選ぶべきだったか。


そして・・・もしあのとき、即決でブーカを辞めさせていたとしたら。その後、一体どうなっていたのか?

それも全く想像が出来ません。


しかし。

ブーカを「辞めさせる」「辞めさせない」それ以外の選択肢をひとつ、付け加えられるなら。第三の選択が可能だとしたら。

ワタシが取るべき最善の策。ひとつだけあります。

それは当時のワタシでは、とても思い付かないことです。


取るべきだった最善の策。当時だったら思いもよらない、第三の選択。

それは

その時点でワタシが辞めることです。