夕方です。デイのミーティングが終わったあとです。
その日もまた・・・ブーカにひと言、言わなければならないことがありました。
その内容については覚えていません。
いや覚えていないというより、アイツしょっちゅうやらかしていたから。今からだと、どれがどれだったかわからんのです。
もう、本当に言いたくないんです。精神的に苦痛なんです。
だけど言うのがワタシの仕事です。これでもワタシ、所長ですから。
・・・本来なら隅に連れて行って、やんわり注意するところです。でもブーカは、その「隅に来て」という指示にすら従わないようなヤツでしょ?
それに隅に連れてきたところで、どうせまた気に入らなかったら大声をあげて。それでN本が飛んで来る。そんな展開になるに決まってます。
なのでもう、デイのど真ん中で言いました。随分、言葉も選んだはずですよ。みんなのいる前ですから。
・・・ブーカ、なんて返してきたと思います?
「なんか文句あるんですか?」
「なんか文句あるんですか?」
この言葉。まー職種にもよるんでしょうけど。なかなか職場で聞けるような言葉じゃないですよね?
それでも上司や先輩が言うのなら、まだわかります。しかし部下の立場にいる人間が・・・こんな言葉、使いますかね?
・・・仕事以外で男同士がこういう言葉使うときは、大概喧嘩ですよ。殴り合いの一歩手前ぐらいですよ。
そんなこと言われて。だけどそのときワタシ、腹を立てていませんでした。
腹を立てるどころか、ハラハラしてましたよ。
というのも、すぐ傍にねずみ男事務長がいたんです。
ねずみ男事務長は、いつものようにイスに足を組んで。デイ内に置いてある雑誌のうち1冊を読んでいました。
前記事に書きましたが。ワタシと事務長、その時点で上手くいってません。
朝の送迎のときなんか、本当に気まずかったんです。そんな状況下でブーカからそんなこと言われてるの,、見られたら。
・・・益々やりにくくなりますよ。それにワタシ個人としても、部下にそういう舐めた態度とられてるところ、見られたくないじゃないですか。
ワタシはねずみ男事務長のほうに目を向けました。ねずみ男事務長は雑誌に視線を落としたまま、表情ひとつ変えません。
そのあと・・・4~5分くらい経ったでしょうか。
「さて・・・っと。」
ねずみ男事務長、ゆっくり立ち上がりました。
「〇〇チくん、ちょっといいかな?」
「へ?・・・なんですか??」
「いや、いいから。ちょっと一緒に上きて。」
このときワタシたちふたりのこと、誰も気にしてなかったと思います。
・・・ひとりを除いて。その関係性から、おそらく地獄行きくんだけは知っていたでしょうね。ねずみ男事務長が、ワタシを連れていった理由を。
2階の院長室の隣り。そこに事務室があったのか、それとも訪問事務所だけだったのか。・・・もう間取りも忘れてしまってハッキリしません。
部屋に入ったねずみ男事務長は、さっさと自分の机のイスに座りました。
「どっかイス持ってきて座って。」
まだ終業前なのに誰もいません。ワタシは適当にその辺のイスを取り、ねずみ男事務長と対面するように座りました。
・・・ちょっとした沈黙がありました。それからひと息つくと、ねずみ男事務長は静かに口を開きました。
「ブーカを辞めさせたいと思ってる。」
なんとなく、そんな話じゃないかな・・・とは思っていました。
そしてワタシはそのとき既に、訪問介護事業所の運営に対する情熱・・・完全に失われていました。
・・・元からあったかどうかも怪しいものですが。
とにかくワタシに、断る理由などありません。その時点では。
その日もまた・・・ブーカにひと言、言わなければならないことがありました。
その内容については覚えていません。
いや覚えていないというより、アイツしょっちゅうやらかしていたから。今からだと、どれがどれだったかわからんのです。
もう、本当に言いたくないんです。精神的に苦痛なんです。
だけど言うのがワタシの仕事です。これでもワタシ、所長ですから。
・・・本来なら隅に連れて行って、やんわり注意するところです。でもブーカは、その「隅に来て」という指示にすら従わないようなヤツでしょ?
それに隅に連れてきたところで、どうせまた気に入らなかったら大声をあげて。それでN本が飛んで来る。そんな展開になるに決まってます。
なのでもう、デイのど真ん中で言いました。随分、言葉も選んだはずですよ。みんなのいる前ですから。
・・・ブーカ、なんて返してきたと思います?
「なんか文句あるんですか?」
「なんか文句あるんですか?」
この言葉。まー職種にもよるんでしょうけど。なかなか職場で聞けるような言葉じゃないですよね?
それでも上司や先輩が言うのなら、まだわかります。しかし部下の立場にいる人間が・・・こんな言葉、使いますかね?
・・・仕事以外で男同士がこういう言葉使うときは、大概喧嘩ですよ。殴り合いの一歩手前ぐらいですよ。
そんなこと言われて。だけどそのときワタシ、腹を立てていませんでした。
腹を立てるどころか、ハラハラしてましたよ。
というのも、すぐ傍にねずみ男事務長がいたんです。
ねずみ男事務長は、いつものようにイスに足を組んで。デイ内に置いてある雑誌のうち1冊を読んでいました。
前記事に書きましたが。ワタシと事務長、その時点で上手くいってません。
朝の送迎のときなんか、本当に気まずかったんです。そんな状況下でブーカからそんなこと言われてるの,、見られたら。
・・・益々やりにくくなりますよ。それにワタシ個人としても、部下にそういう舐めた態度とられてるところ、見られたくないじゃないですか。
ワタシはねずみ男事務長のほうに目を向けました。ねずみ男事務長は雑誌に視線を落としたまま、表情ひとつ変えません。
そのあと・・・4~5分くらい経ったでしょうか。
「さて・・・っと。」
ねずみ男事務長、ゆっくり立ち上がりました。
「〇〇チくん、ちょっといいかな?」
「へ?・・・なんですか??」
「いや、いいから。ちょっと一緒に上きて。」
このときワタシたちふたりのこと、誰も気にしてなかったと思います。
・・・ひとりを除いて。その関係性から、おそらく地獄行きくんだけは知っていたでしょうね。ねずみ男事務長が、ワタシを連れていった理由を。
2階の院長室の隣り。そこに事務室があったのか、それとも訪問事務所だけだったのか。・・・もう間取りも忘れてしまってハッキリしません。
部屋に入ったねずみ男事務長は、さっさと自分の机のイスに座りました。
「どっかイス持ってきて座って。」
まだ終業前なのに誰もいません。ワタシは適当にその辺のイスを取り、ねずみ男事務長と対面するように座りました。
・・・ちょっとした沈黙がありました。それからひと息つくと、ねずみ男事務長は静かに口を開きました。
「ブーカを辞めさせたいと思ってる。」
なんとなく、そんな話じゃないかな・・・とは思っていました。
そしてワタシはそのとき既に、訪問介護事業所の運営に対する情熱・・・完全に失われていました。
・・・元からあったかどうかも怪しいものですが。
とにかくワタシに、断る理由などありません。その時点では。